所得の種類 その3 給与所得、退職所得

こんにちは、加藤丈博です。

今日からは再度所得の種類について書いていこうと思います。
今回は給与所得、退職所得について書いていきます。

 

5.給与所得

①給与所得とは
給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
②給与所得の計算方法
給与所得の金額は、
収入金額(源泉徴収される前の金額) - 給与所得控除額 = 給与所得の金額
で計算されます。
(1)収入金額

収入金額は基本的には給与や賞与、役員報酬などの金銭収入ですが、
それ以外にも以下のような経済的利益も含まれます。

イ 商品などを無償又は低い価額で譲り受けたことによる経済的利益
→度が過ぎる社員割引など
ロ 土地や建物などを無償又は低い使用料で借り受けたことによる経済的利益
→社宅・駐車場など
ハ 金銭を無利息又は低い利息で借り受けたことによる経済的利益
→会社が社長に金銭を貸す場合は利息を取らなければなりません

 

(2)給与所得控除額

給与所得は、事業所得などのように必要経費を差し引くことができない代わりに、
所得税法で定められた給与所得控除額を給与等の収入額から差し引きます。


日本で最も多いのは給与所得者です。
もしも給与所得者がそれぞれ必要経費を計算して、確定申告をするようにしたら
税務署がパンクしますね……
また年末調整のように、給与所得者の税額を会社が計算するといったこともできなくなります。

要は給与所得者の必要経費を一律に法定で決めてしまったということです。
しかしそれでは一部の、
「私は他の人より必要経費が多い!」
といった人から不満が出かねません。
そこで次のような制度があります。

 

(3)特定支出控除
給与所得者が次の6つの費用のうち一定の要件を満たす特定支出をした場合で、
その年中の特定支出の額の合計額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額(※)」を超えるときは、
確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができます。
(※)その年中の給与所得控除額の1/2

イ 通勤費
ロ 転居費
ハ 研修費
ニ 資格取得費
ホ 単身赴任者の帰宅旅費
ヘ 勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)(65万円が上限)

→上記のような支出が多い人は実質的に給与所得控除額を増やすことができるので、自身の支出について注意して集計しておくことが重要です。

しかし、特定支出控除を受けるためには、上記6つの特定支出について
「給与の支払者(=会社)が証明したものである」
ことが要件となります。
確定申告時期になっていきなり会社に
「特定支出控除の確定申告をするから証明がほしい」
と言っても会社は戸惑ってしまうでしょう。
早めに会社には言っておくほうがなにかとスムーズに進むと思います。

また会社から証明をもらう以上、領収書などは保管してあることが望ましいです。
そのためにも、
「今年は特定支出控除を受けるかもしれない」
といった年については、さまざまな領収書をあらかじめ集めておくことも重要です。

 

③年末調整
給与所得のみがある人については、各人が確定申告をするのではなく、
各人の税額の確定を雇い主(会社)にさせることとしています。
それを「年末調整」といいます。

会社で年末調整を受ける際には、
・扶養控除等申告書(マル扶)
・生命保険や地震保険の控除証明書
・国民健康保険、国民年金などの支払額の証明書
などを提出するかと思います。
これも各人の税額を確定させるために必要で、
かつ会社にその集計をさせても負担が大きくならないために会社に任せている部分と言えます。

もしもこれら書類の準備が遅れるなどして、会社で年末調整ができなかった場合、
自身で確定申告をする必要が生じるので、会社の定めた締め切りに間に合うよう、書類の準備を進めてください。
それでももし間に合わなかったら……
確定申告は原則平日しか受け付けてはくれないので、お困りの際はお気軽に弊社までご相談ください。

 

6.退職所得

①退職所得とは
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、
社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、
適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や
賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。

 

②退職所得の計算方法
退職所得の金額は
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
で計算されます。

(1)退職所得控除額
退職所得控除額はその会社への勤続年数により決まります。

20年まで→40万円/年(1年未満切り上げ、最低80万円)
20年を超えた部分→70万円/年(1年未満切り上げ)

勤続年数が30年と5か月の場合の退職所得控除額は、
端数5か月を切り上げて31年、
20年×40万円+11年×70万円=1570万円
となります。

→退職所得控除額は他の所得の控除額に比べるとかなり大きくなっています。
退職金の相場についてまとめてあるサイトがありました。
http://ten-navi.com/hacks/retire-19-8033(転職Hacks)
これを見る限り、
大半の人は収入金額よりも退職所得控除額が大きくなり、
退職所得はゼロになることが多いようです。
(2)×1/2について
(1)の退職所得控除額の時点で、既に所得は大半が圧縮されていますが、
さらに所得額を×1/2することとなっています。
これは、退職金には長期間の勤務に対する給与の後払い的性格があるためです。
所得税は累進課税なので、長く平準化した収入よりも
一時にまとまった収入の方が高い税率が課されることになります。
給与の後払いによって、高い税率が課されることを避けるために、
×1/2という制度が適用されています。

 

③退職所得の税額計算方法
退職所得は原則として他の所得と分離して所得税を計算します。
そのため②で計算された退職所得の金額が大きかったからといって、
給与や事業など他の所得に掛け合わせる税率が高くなることはありません。

 

 

本日もここまで読んでいただきありがとうございます。
給与所得、退職所得といった、
身近な所得についてお話しさせていただきました。
次回は殆どの人になじみのない山林所得について書いていきます。
次回もよろしくお願いします。

 
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